生徒「夏の定番で肝試しってあるじゃないですか」
先生「どうしました急に」
生徒「定番は外せませんし、やりましょう」
先生「白昼堂々にですか。そして今は冬ですが。どうして急に肝試しをやりたいだなんて思ったんですか」
生徒「肝って肝が冷えるってところから来てますよね」
先生「おそらくは」
生徒「じゃあ、試される側から試す側に回れば肝が温かくなるかと思って」
先生「待って。その理屈はおかしい」
生徒「冷たいんです」
先生「だとしても温かくはならないと思いますよ」
生徒「私よく焼き肉行ったときに怒られるんです。豚肉はよく中まで焼きなさいって。すごく温かそうだと思って」
先生「豚肉がですか?」
生徒「誰が豚ですか」
先生「言ってませんよ」
生徒「まあ本音は受験のストレスでむしゃくしゃするから誰でもいいから脅かしてスッキリしたい」
先生「ぶっちゃけましたね」
生徒「それが教師ならなおいい」
先生「ぶっちゃけましたね?」
生徒「というわけで先生よろしくお願いします」
先生「駄目ですよ」
生徒「ちっ」
先生「それを聞いて進んでやりたがる人がどこにいますか」
生徒「(笑う)」
先生「無言で指さしてもだめです」
生徒「でも先生、もうやってるんですよ」
先生「何がです」
生徒「先生の後ろに」
先生「僕の後ろに何があるっていうんですか」
生徒「とてもおいしそうな豚の肝が」
先生「ぎゃああああ! なんてものを持ってきてるんですか」
生徒「私のお弁当です」
先生「またすごいものを、しかもこれまだ生でしょう」
生徒「はい。だからしっかり火を通そうと思って。教卓の上って日当たりがいいんですよね」
先生「日光では肉は焼けま……ん? ああ、だから肝試すをやって肝を温めるってわかりづら!」
生徒「仕方ないのでこれは家に持ち帰って焼き直します」
先生「衛生上危険を感じたらちゃんと捨てましょうね」
生徒「大丈夫です。豚の肝もいつ先生にバレるか冷や冷やしてはずなので、実質冷蔵庫と言っても過言はないです」
先生「過言です」
先生「ところで先週のテストの結果を言ってませんでした。補習のラインは40点ですが」
生徒「え、なんで今言うんですか」
先生「お弁当が腐る前に帰れるといいですね、残念ながら君の点数は」
生徒「え、嘘」
先生「40点です」
生徒「なあんだ、先生。脅かさないでくださいよ。肝が冷えたじゃないですか」
先生「いや、40点は補習ですよ? 41点からがセーフです」
生徒「先生」
先生「はい」
生徒「豚の肝を差し上げるので見逃してください」
先生「肝で買収を試みないでください」