「拗音系」

小さい「ゃ・ゅ・ょ」を多用した音読課題


1 車から火が!

 新春に信州朱雀荘(しんしゅうすざくそう)にて金色夜叉の写本消失を引き起こした高級車出火事件について、文化資料喪失による粛正だったのでは? との疑義が生じている。現在若年層の仕業との了見が主流だが、容疑者を老若男女と問わず適宜、協議のもと、情報開示を行う。

 施設所内の消火装置故障有無の調査は中止、渦中の写本は衆人環視、館主もそばにいたとのことだ。

 急遽、緊急召集による当事者調査が行われ、三者三様車種の提出が求められた。了承したのは招集のうち少数なのだが、技術者の陳情に「情状酌量」と調査機関上層部と御曹司が処断したため、劇的な逆転とはならなかった。どうも妙だと、一団は脈々と捲し立ている聴衆の意見を踏襲し、「町議衆技術者陳述書(ちょうぎしゅうぎじゅつしゃちんじゅつしょ)」を作成、調査内容が杓子定規とならぬよう精査した。


2 チーム解散

 既キャラの強化仕様について、急遽、許可が降りたため、許諾の曲解などと言われ却下を食らわぬよう、急ピッチで企画者会議を敢行した。開業以来、合資してきた巨大企業の機嫌を損ねぬよう虚言のなきよう、とよく言い聞かせられたのだが、鬼気迫る会合に仰天したか動転したか、上長が意見を悉く棄却、異議もなく終了、始終誰の意見も日の目も見ることなく驚天動地の企画者会議は今日中の予定もむなしく解散となった。

 客層の中高生には脚本の出来はよき、と言われていただけに、脚本を流用してのサービス移行も視野に入れたが、合資者の賛同は僅少、企画書は質屋に入れろと囁かれる始末、資料写真によると企画者たちの表情は洒々落々(しゃしゃらくらく)とさっぱりした風だったが、その真相はわからない。


3 総務の人

 今日の営みを振り返って見ると、妙に進捗が捗ったようにも見える。出勤から正味2時間ほどで未着手だった所用も済ませることができたし、未入金の請求書も催告書を発送していたおかげで収納できたし、さらには予算の支出整理も処理できた。

 社名変更も手続きに行けたし、法人格の略称も代表者の苗字も間違いなく記入欄に記入してきたはずだ。新入社員の社員寮入寮手続きは明朝の処理でよいはずだし、地域の納涼祭の奉納品として大量の茗荷(みょうが)の発注は先週終了した。

 ただ神主が腰痛だとかで名代がひとり息子なのだが、用意していた我が社名物の求肥入り餅巾着は苦手というので、急遽求肥抜きの餅巾着に差し替えることにするが、入念に求肥が混入しないかの確認作業となるので結局、気は滅入る。


4 安全推進

 今週の死傷者数は減少しており、今秋に突入してからの死傷者数は現状ゼロとなっております。職場の皆様におかれましても、益々安全意識の下精進いただきますよう重々お願い申し上げます。さて、死傷者数減少に寄与する良好事例の紹介をしましょう。主任技術者による高所作業車での点検において状況確認と指差呼称(しさこしょう)による認識づけが効果的であることは既に周知のことと存じますが、指差呼称の効果を上昇させる手段として声の大小がございます。ボリュームが大きければ大きいほど脳内の注意力も危険箇所に向きますから、近所迷惑とならぬように指向性の声による指差呼称の実施が推奨されます。


5 職業病

 職業病とは言い得て妙なもので、仰々しいもの言いだとは思いますが、いやはや私も職業病罹患者と言わざるを得ないのでしょうな。私は幼少の頃より将来は商社に入社して出世街道を歩むのだなどと思っておりましたが、入社早々『お前は営業向きじゃない。社内的な処理や処遇やら、そういう部署に就いたらどうだ』と上長から推薦されまして今は人事部門にいるのですが、ここが職業病でした。職能等級表に基づき社員ひとりひとりに『職能等級基準書』を配布し職務にあたる姿勢や基準を示すのですが、中にいる無能に『明朝も職場に席があるとゆめゆめ思うな』と突きつける瞬間が心地よいと感じる私はまさに『職業病』なのでしょう。(※よい子は他人を無能呼ばわりするのはやめましょう)


6 尿検査

 見よう見まねで尿検査をしてみようとしたが、治療目的でもないので、尿を調査したところで、何も得ようもなく、ただ尿を取ろうとした徒労だけを取得したようだった。専門科医なら老廃物等から尿の成分を調査し、要検査等の診療結果を記入できようものだが、見よう見まねの医師に用はないらしい。すぐに用済みとして追い出されてしまった。手元の尿を転用しようにも尿は所詮尿なので用済みのものなので尿は尿以外の使い道もなく途方に暮れるしかなかった。泌尿器科の医師登用試験に落ちたのだからやむなしのことではあるが、尿など捨てて次は東洋医学でも勉強するとしよう。


7 猫型AI

 にゃうろーでぃんぐ、ですにゃ、ご主人さま。ニャァは、ご主人さまの身の回りのお世話をします猫型AIですにゃ。ニャオとお呼びくださいですのにゃ。むむ、早速前方600メートルのところに敵影発見ですのにゃ、何をしているのか、ニャァがスキャンしますのニャ。にゃにゃ、あれはブービートラップというやつですにゃ。足下の色が違う地面には要注意ですにゃ、ご主人。一度あれを踏み抜きゃあ、ニャァ諸共地の底まで真っ逆さまにゃ。まあ、ニャァは猫ですかにゃ? ご主人と違ってしゅたたっと着地することくりゃいお茶の子さいさいですけど、ご主人はそうはいかないにゃ。ご主人が哀れなミンチ肉になる前にニャァが万全のサポートをするのにゃ。

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