A・・・・(遺品整理に訪れた孫)
B・・・・(死んだ祖父が遺したアンドロイド)
(場面設定)
Aは祖父が死亡したため、祖父の屋敷へ遺品整理に訪れた。
A「はー、埃くせえな。しかし、じいさん、蒐集家だとは聞いていたが、こりゃ確認だけで一日終わるぞ」
B「お手伝いしましょうか」
A「いやまあほとんど捨てるだけだからいいけど、って誰だ?」
B「私は家事、身の回りのお世話のために作られたアンドロイドです。正式名称はありませんが、ナミエと呼称されていました」
A「じいさんこんなものまで作ってたのか。つーか、死んだばあさんと同じ名前つけやがって」
B「新規命令が一週間以上入力されていませんので、現在当個体におけるユーザー権は放棄されています。何か命令をいただければ、自動的にあなたにユーザー権が移行されます。命令をどうぞ」
A「あー、ユーザー? そんなの面倒だからいいよ」
B「見る限り、あなたはこれらの片付けをする必要があり、手が足りていないと見受けます。当個体からの支援を提案します」
A「だから、いらないって。隅のほうででもおとなしくしていてくれ」
B「それは命令ですか?」
A「命令じゃねえよ。とにかく邪魔しないでくれ」
B「新規の命令を受け付けました。これよりあなたを当個体のユーザーとして登録します。名前を教えてください」
A「おいおい、何勝手にやってるんだよ。取り消しだ。取り消し!」
B「トリケシ様。登録完了しました」
A「だーっ、それは名前じゃねえ。なんだってんだよ、まったく。融通が利かねえなあ」
B「申し訳ありません」
A「謝られても仕方ねえよ。そういう風にできてるんだろ。とにかく掃除しないと。これはいらない奴で、こっちも捨てれるな」
B「トリケシ様」
A「だから、それは名前じゃないって」
B「私も捨てますか」
A「は?」
B「命令をいただけたら、そのようにいたします。もし、当個体に感情があるように振る舞うことで、廃棄への抵抗があるということであればこれより当個体はスリープモードに入ります」
A「待て待て待て待て。なんだ突然」
B「当個体はユーザーの願いを叶えるために存在しています」
A「だからって自分を壊すような願いまで叶えることはないだろ」
B「そういう風にできておりますから」
A「わかった。じゃあ命令する。この屋敷にあるじいさんの遺品を全部俺の家に運ぶぞ」
B「全部でございますか? しかし先ほど捨てると」
A「こうなったら全部面倒見てやる。お前だけ使って、他を捨てるってのも目覚めが悪いしな」
B「トリケシ様。残念ながら当個体の筋力は一般的な女性水準で作られていますので、物品の運搬にはあまり適正がありません」
A「な。本当、そういうとこ融通利かねえな」
B「廃棄しますか?」
A「それはもういい。じゃあ二人でやるぞ」
B「承知しました」
アンドロイドキャラは淡々としゃべりがちになり、聞いていて飽きが来ないようにするにはどうしたらよいかを考える必要がある。「私も捨てますか?」という台詞から台本の空気が一変するので、しっかりと演じる必要あり。「そういう風にできている」という台詞に感情をどこまで込めるのかというのが肝。「融通が利かない」「捨てる」というワードはオチにつながるため、途中の分をしっかり聴衆に印象づける必要がある。孫はこの台本内で明確に成長しているため、心情の変化をうまく見せる必要がある。
・AはBの容姿に惚れている
・Aは祖父のことが大好き
・Bは侵入者撃退の役割を担うアンドロイドであり、Aを品定めしている
・Bは祖父との生活の中で感情を得ているが、新規ユーザーのAの前では初期化に努めている
(廃棄についての恐怖も持ち合わせている)