A・・・・(家庭教師)
B・・・・(良家の娘)
(場面設定)
Bは家庭教師であるAから来客を出迎える際の対応についての授業を受けている。
B「いらっしゃいませ。ようこそ当家にお越しくださいいただきました」
A「はいストップ」
B「何よ。どこか間違ってた?」
A「お嬢様。敬語は多ければいいというものではありませんよ」
B「多いほうが、大きいほうが、高い物のほうが、なんでもいいと相場は決まっているとおもうのだけど」
A「あえて少ない手数で勝負するほうが上品というものです。優雅に泳ぐ白鳥は見にくくばたばたと飛沫をあげないでしょう」
B「そうね」
A「わかっていただけましたか」
B「確かに少ないほうが上品かも。もういい歳だってのに、未だおひとりでいらっしゃる先生が言うと説得力が違いますわね」
A「ほほほ、手のかかる生徒がいつまでも卒業してくれないものですから」
B「だったら、先生お手本見せてよ。いつも堅物の先生が、麗しさや品を示してくれないから、私も卒業できないんだわ」
A「え、嫌です。誰かの真似をして出る物ではありません」
B「来週の宿題は三日前に終わらせるわ」
A「それは当然のことです」
B「こと私においてはそれは当然かしら?」
A「くっ。では、(こほん)……いらっしゃいませ、ようこそ当家にお越しくださいました。遠いところお疲れではありませんか、ふふ、お茶の用意をしてあります。荷物を置いたらホールへご案内いたしますわ」
B「…………(息の演技)」
A「さあ、手本は見せましたよ。次はあなたの番、どうしました?」
B「ちょっと気分が悪くなったから、部屋で休むわ」
A「何のために手本を示したと、ちょっと待ちなさい。まだ授業は途中ですよ」
B「あんなの見せられたら授業どころじゃないわよ」
来客応対の授業を受ける必要がある良家の娘は「よそ行き顔」と「普段」のギャップ、家庭教師は「堅物である普段」と「手本」のギャップ。共にそれらをどう見せるのかが重要な台本。また、冒頭の台詞は掴みであるため、聴衆を引きつけるような台詞回しが必要となる。
・Aはやりたくてもやれない(頑張り屋ではある)
・Aは本当はできるのに、やらない
・AはBに惚れている
・Bは自分が独身であることを気にしている
・Bは元々貴族の出自であったが没落して今の職についている
・Aの母は亡くなっており、Bは母に義理立てしてAを育て上げたいと思っている