A・・・・(デートに誘っている)
B・・・・(デートに誘われている)
(場面設定)
会社や学校の昼休みなど、「休日」以外のところで休日の予定について話している。
A「ごきげんよう」
B「どうした、何のあいさつ?」
A「いいじゃない、別に。ところで今週末って空いてる?」
B「週末というのは具体的には何曜日を指すんだ?」
A「細かいわね。土曜あるいは日曜を指すわ」
B「空いてるって言ったら何かあるのか?」
A「埋めてあげるわ」
B「土に?」
A「予定をよ。死にたいなら綺麗な花が咲くまでお世話しましょうか?」
B「あいにく埋めても草しか生えてこないと思うぞ」
A「雑草魂、結構。それで予定は?」
B「空いてるっちゃ空いてる」
A「何その曖昧な返事」
B「何をするかによる」
A「買い物とかどう?」
B「何を買うんだ?」
A「服とか日用品とか雑貨とか、なんでもいいでしょ」
B「服はだって着る物違うし、日用品は別に一緒に住んでるわけでもないし、雑貨は趣味とかあるし……」
A「そう、じゃあ県境の山にピクニックとかはどう?」
B「あ、ちょっと落ち着こう?」
A「大丈夫、山なら雑草も大歓迎。予定とあなた、どっちを埋める?」
B「行かせていただきます」
A「よろしい」
「埋める」のが「予定」なのか「土」なのかという軽口を言ったが故に脅されてしまうというオチにつながる原稿となっている。そのため、どこで力関係が逆転したのかという点を見極めて欲しい。最後の「行かせていただきます」の言い方ひとつで、オチの余韻が変わってくるだろう。
A「ねえ、今度の日曜日ひま?」
B「デートのお誘い?」
A「え、あ、うん。そんなところ。なんでわかったの」
B「顔に書いてあったわよ」
A「え、嘘」
B「嘘よ」
A「なんだ嘘か」
B「デートのお誘いも嘘ってこと?」
A「え、それは本当です」
B「なんだ嘘じゃなかったの」
A「え、嘘じゃないよ」
B「私の目を見ても言える?」
A「うん、あの日曜日一緒に出かけませんか」
B「残念だけれど日曜日は用事があるわね」
A「え、嘘。だってデートのお誘いって、あれ?」
B「ええ、デートのお誘い? とは聞いたけど、日曜日にひまとは言ってないわ」
A「そんな嘘だ」
B「ええ、嘘よ」
A「さっきからなんなのさ」
B「今朝までは用事はなかったんだけど、ついさっき用事ができたの」
A「え、まさか」
B「法事でおばあちゃん家に帰らなきゃいけないの」
A「は? 用事って僕の誘いのことじゃないの?」
B「は? だから、『日曜日にひまと言っていないこと』を嘘だって言ったでしょう。嘘嘘言いすぎて混乱した?」
A「いいよ、もう」
B「なんなら一緒におばあちゃん家に来てもいいけど」
A「え」
B「その場合、私の家族に紹介することになるけど、どうする?」
A「それは、え、いいの。行く。行かせていただきます」
B「よかった。私のお父さん。柔剣道共に五段で、俺より弱い奴に娘が守れるか-、って考えの持ち主なんだけど」
A「あ、やっぱり嘘です」
B「この嘘つき」
「嘘」という単語がかなり出てくる構成。繰り返し出てくる単語は印象づけに使いやすいが、その分、今現在の「嘘」が何を指しているのかという情報をいかにうまく聞かせるかが重要。
A「おい、グラウンド行くぞ」
B「やだ」
A「はあ? お前来ないとドッヂボールの人数合わねえよ」
B「他のクラスの男子を誘えばいいでしょ」
A「馬鹿。木曜日はウチのクラスが使えるんだから、よそのクラスの奴呼んだらまた戦争になるだろ」
B「なればいいじゃん。とにかく行かないから。図書室で本を借りないと」
A「お前じゃなきゃ意味ねえんだよ」
B「え、何」
A「お前の外野からこっちまでの遠距離パス、魔神ボールからの俺のソニックショットのコンボが楽しいんだよ」
B「魔神とかそういうのもうやめたから」
A「なんだ、腹でも痛いのか。いいから行こうぜ」
B「やめてよ」
A「なんだよ」
B「みんなから笑われるの。いつも男子に混じって野蛮だとか、擦り傷ばっかの膝が汚いとか、もうとにかくそういうのはいいの。わたしやめるから」
A「なんだよそれ」
B「だからこれからは本を読んだり、折り紙したりそういうので過ごすの。だからあんまり話しかけないで」
A「ふうん、でも今ひとりぼっちじゃん。誰か一緒にやる奴いんのか」
B「変な目で見られるよりはましよ」
A「じゃあ俺も図書室行く」
B「え? 君は別にドッヂボールしてくればいいじゃん男子と遊んできてよ」
A「いや、そういうのやめたから。魔神ボールが飛んでこないのにドッヂしても面白くないって言うか。とにかく行くぞ!」
B「ちょっと、なんでそっちが行くのについて行くみたいになってんの。それにいつも国語の時間寝てるじゃん」
A「いいんだよ、マンガとか借りればいいんだし」
B「木曜日だよ?」
A「……今日は腕の調子がよくない日」
B「ばっかみたい」
不器用な小学生男子特有の感じと、男子に混ざることを揶揄されてしまう女子の対立構図。共に「やっぱりそっちをやりたい」と思う感情を演出することもできる。どこで心が揺れるのか探ってみてもよい。また「魔神ボール」や「ソニックショット」など技名を言う言い方や、「みんなから笑われる~」の台詞の演じ方に注目。女子の長尺台詞は考えるより先に言葉が出る構成になっているので、演じ応えがあるはず。
・Aは何らかの事情で仕方なく誘っている
・Aは是非とも行きたい
・Aは断られると思っている
・Aは断られると思っていない
・Bは行くのに乗り気である
・Bは誘いに乗りたくない
・BはAを疑っている