A・・・・(ガキ、危ない仕事をしている)
B・・・・(オッサン、Aとコンビを組んでいる)
(場面設定)
報酬に対して、依頼を受けるか話し合う二人の男たち。
A「絶対に受けるべきだ」
B「いいや、受けないべきだね」
A「オッサン正気か? 俺の話を聞いてるか? この依頼の内容ちゃんと見たか? 鼻も詰まってんじゃねーか? 元々味オンチだしよお」
B「味オンチは関係ねえだろ。いつまでイジるんだよそのネタで」
A「腐ったミルクをピッチャーまるごと一気飲みして気づかねえんだもん、仕方ねーだろ」
B「ヨーグルトって知ってっか?」
A「馬鹿が。素人が作った飯なんざ安全なわけねえだろうが」
B「ハッ。散々ボロボロのおにぎりを差し出してきちゃ、『残したらやいやだ』って駄々捏ねてたのによお」
A「昔の話だろ。腐れミルクとヨーグルトの区別もつかねえ奴の判断なんか信じられねえっつってんだよ」
B「別に間違えて飲んだところで運が悪かったら死ぬだけってだけだろうが」
A「笑ねえよ。死因が牛のお乳でした、なんざ」
B「笑えよ。まだ笑い話だろ」
A「アホ」
B「だがよ、この仕事を受けりゃツイてるツイてねえ関係なく死ぬぜ」
A「わかんねえだろ」
B「いいや、わかってるだろ。俺の話聞いてたよな? この話のウラまで見えてるよな? お前は鼻も利くし、飯の味にもうるさい」
A「最後のは関係ねえだろ」
B「仕返しだ」
A「お前の故郷で言う『ウラメシヤー』ってやつか?」
B「祟り、な。安心しろ、俺が悪霊ならお前なんざ百回は殺してるさ」
A「『オヒャクドマイリ』ってやつか」
B「どうしてこう妙な知識ばっかり覚えてやがるかねえ」
A「故郷につれていってくれるって話、俺楽しみにしてたんだぜ」
B「おー健気なこった。ヨシヨシ」
A「ガキ扱いすんな。もうすぐに追い越すっての」
B「おーできるならやってみな。死んだらもう歳も食えねえぞグルメ君」
A「洒落になってねえよ」
B「ああ、洒落じゃねえ。脅しでもねえが、死なないためにも受けるべきじゃねえ」
A「尻尾巻いて逃げろってか」
B「聞き分けてくれよ、ガキ」
A「オッサン、俺はもうガキじゃねえんだよ」
B「そうか。そうだな。もう八年になるもんな」
A「全然長くなかったけどな」
B「ガキのうちは一年が長かったモンだがなあ」
A「オッサンのせいだよ、ばーか」
B「そこは俺のおかげ、だろうが」
A「オッサン。俺、この仕事受けるから」
B「ああ、じゃあ俺は死にたくねえから草場の陰で見守ってるわ」
A「死んでんじゃねーか。オッサンは特等席」
B「どこだよそれ」
A「俺の横」
B「ふっ、頼もしくなってくれたもんだな」
依頼を受けたい側と受けたくない側で、最終的には受ける方向で決着がつく構成。依頼の内容(オッサンのための敵討ち等)を詰めたうえで、Aが半人前と思いきやもう一人前だった、とBに納得させるという、この台本内でAの成長をBに見せることがゴール条件であることをクリアしたい。キャラクターとして「味オンチ」「食事にうるさい」、「オッサン」と「ガキ」のように、受ける受けない以外にも対比をつけている。演技上は「五感(触感以外)」が並んだ長台詞の対比があるが、長丁場のやりとりはすべて「俺はもうガキじゃねえんだよ」「そうか、そうだよね〜」このやりとりのための短期決戦のためだけにあるといっても過言ではない。
それはそれとして、一度通常で演じ終えた後「Bは幽霊である」という設定で是非挑戦してみて欲しい。幽霊には触れない。幽霊は歳を重ねない。
・AはBの敵討ち等、Bのために依頼を受注したい。
・AはBを陥れるために依頼を受注したい。
・AはBに恋愛感情を抱いている。
・Bは依頼を受注すると自分が死ぬ。
・BはAがこのあと死ぬことを知っている(タイムリープや未来視等)
・BはAの恋愛感情に応えたくないと思い、8年を過ごした。
・Bはすでに故人である。幽霊としてバディを組んでいる。