A「最近生活に潤いがないんだよね」
B「そうなん?」
A「うん、そお。なんかない? あたしの生活を潤わせてくれるモノ」
B「あー、潤うかどうかは知らんけど」
A「うん」
B「こないだ絵画コンクールで佳作獲った」
A「絵画?」
B「うん」
A「美術部の?」
B「うん」
A「それさ」
B「うん?」
A「めっちゃいいじゃん」
B「え、ありがとう」
A「いやいやいやいや、すげえよ。一瞬で潤ったわ」
B「え? 今ので?」
A「今ので」
B「佳作だよ?」
A「いやいやすごいって。めっちゃすごいって。あたしが美術の授業で先生に言われた評価知ってる? 『肥溜めの絵ですかぁ、いいですねえ』――描くわけねえだろ!」
B「でも佳作だし。わたしの他に十何人いるし」
A「逆に考えよ? 十何人しかいないんだよ? あたしの身体に生えてる指より少ないよ?」
B「いや、その上には金賞と銀賞と銅賞と特選がいるし」
A「四天王の話はいいの」
B「四天王」
A「あたしは今あなたの話をしてんの」
B「え?」
A「誇っていいよ! 受賞者が身近にいるってだけで鼻高モノだわ」
B「大げさだって」
A「ね、ね、その絵はないの?」
B「まあ、ケータイに写真で撮ってるやつなら」
A「あらまあ綺麗な色使い! 心が、荒んだ心が洗われるわ」
B「ちょっと大きな声出さないでよ恥ずかしい」
A「なして? 心が動いたら身体も動いちゃう! これ自然の摂理もう誰もあたしを止められない」
B「絵のことなんてわかるの?」
A「何おう。絵を見る大衆は素人が大半なのよ? これだけ感動させられちゃった見てほらここのブルーとかすっごい好みうふふふ」
B「画像拡大しなくていいから」
A「もう『あたし審査員特別賞』あげちゃう。はあ、昔から絵とか上手だと思ってたけど、見ないうちにこんなにすごいの描けちゃうだなんて」
B「そんな、まだまだだよ」
A「いいや、才能あるね! ね、ね、次のコンクールはいつなの?」
B「来月だけど、正直出そうか迷ってたんだよね」
A「えー、もったいない! 出しなよ。絶対いけるって。あたしもうファンだもん」
B「じゃ、じゃあ出してみようかな」
A「しっかし好きだなぁ、この『イルカの絵』!」
B「ん?」
A「ヤクドーカン? っていうの? すっごい海の上で気持ちよさそー」
B「ねえ」
A「ん?」
B「これ、飛行機」
A「ん?」
B「だから、これ飛行機。飛行機の絵」
A「え、あ、そうなの? まるで生きてるかと思ったよぉ。勘違いしちゃった、いやぁ、まあ味があることに変わりは――」
B「おい」
A「はい」
B「肥だめに帰れ」
A「すんませんでした」
相づちや口調からリズムを作ることに特化した台本。途中で「話をしてんの(四天王)」といってスベり散らかすところや、肥だめのノリ突っ込みなど逆シーンもある。全体的にAが色んな大げさキャラを演じることになり、Bは最後の塩対応の前座としてとにかく照れまくる。道中が盛り上がりすぎるので、冒頭は淡々としている。テンションの起伏をちゃんと意識したいところ。
・AはBと仲が悪い
・Aはおだてて、あわよくば帰り道でスイーツなどをおごってもらおうとしている
・Bは盗作をしている
・Bの家系は厳しく、佳作程度では褒められることもない