「恋だった」(百合片思い)

A・・・・(彼氏ができました)

B・・・・(Aにずっと片思いしていた)

(場面設定)

好きな人に好い人ができたことを祝福しなければならない


恋人できた女×幼なじみ

A「ねえねえ、ちょっと聞いてほしいことがあります」
B「いやよ」
A「えー、なんで聞く前からそんなこと言うかなぁ」
B「聞きたくないの」
A「どうして? いいニュースかもしれないよ?」
B「あなたにとってはね」
A「それはどうでしょー? あ、でも、私の喜びがキミの喜びになるかもしれないでしょー?」
B「そうね」
A「じゃーん、実は彼氏ができました」
B「知ってる」
A「え、嘘。情報はやーい。あ、じゃあさ追加ニュース。実は明日で付き合いだして半年記念なんです」
B「それも知ってる」
A「え、それも知ってたの? あはは、キミってば情報通だねえ」
B「まあね。あなたのことならなんでも知ってるよ」
A「そうなんだ。そっか。半年も、気づいてないって思ってた。ずっと」
B「そこがあなたのいいところだ」
A「そっか。えへへ、サプライズニュースじゃなくなちゃったね」
B「まあ驚きはしなかったわね」
A「本当に何もないの?」
B「何を期待してるのよ」
A「それは、もちろん」
B「びっくりしたわ。驚いた。超ショック。これでどう?」
A「そんなんじゃ足りないよ。もっと真剣に」
B「おめでとう」
A「あ」
B「これでいいのよね?」
A「ありがとう」
B「素敵な恋だったわね。拍手を贈るわ」
A「へへへ、親友からお祝いされるのって、なんだかむず痒いね」
B「ええ本当。半年も黙ってた薄情者を祝福するなんて癪に障るわ」
A「ちょっと。実は怒ってるの?
B「そうね。ちょっとは怒ってるかもね」
A「じゃあ明日さ」
B「明日は半年記念のデートでしょ?」
A「え?」
B「寝坊しないように今日は早く寝なきゃ」
A「別にまだ約束の時間とか決めてないし」
B「もう私は起こしにいってあげないからね」
A「そっか。そうだよね。うん」
B「じゃあね、バイバイ」
A「うん、バイバイ」

狙い

台詞の水面下に心情が仕込んである台本。文字通りではない心情をうまく表現する必要がある。AもBも互いに片思いをしている、あるいは片方がしている、そういった想定での台本。AはBから「男と別れなさい」という言葉を待っているかもしれないし、BはAの口から恋人宣言を聞くまでの時間制限付きの関係としていたかもしれない。互いの心情は組み合わせ次第で100通り——とまではいかずともそこそこのパターンあり、ここですべて解説するのも野暮なので、ぜひとも各々で味わって演じてほしい。

 

演技に使える台詞抜粋……しようかと思ったが、割と全編に散りばめていくらでも心情込められるので、文字数の都合上、紹介はしない。あえて紹介するなら「そうなんだ。そっか。半年も、気づいてないと思ってた。ずっと」という台詞。次への台詞の繋ぎに違和感があると思う。ずっとで終わるのか、続きの言葉があるが詰まったのか、Bが台詞を食って被せるのか。割とBが台詞を被せたり、AとBともに台詞を受けての「間」を設けたり、お互いの掛け合いの求められるレベルは高めの設計である。

やり方など

・AはBに片思いしている。(Bも自分に片思いしていると知っている)

・AはBに片思いしているが、Bの気持ちは知らない

・AはBからの告白を待っている

・AはBに、A自身から離れて欲しいと思っている

・BはAに片思いしている。(Aも自分に片思いしていると知っている)

・BはAに片思いしている。Aにはその気持ちがばれていないと思っている

・BはAが彼氏を作ったことを裏切りだと思っている

・BはAの記憶から消えたいと思っている


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