A・・・・主人
B・・・・従者
(場面設定)
主人の執務室、眼前まで迫った刺客を始末したところからシーンは始まる
A「おい、もう5人目だぞ。どうなってるんだこの屋敷の警備は」
B「ちゃんとお前の喉元に行く前には始末してる」
A「そういう問題じゃないだろ。あと比喩でもなんでもなく、今日のは本当に喉元だったからな。目の前で刺客が倒れるのを見た僕の気持ちを考えろ」
B「……? 返り血は浴びせていない」
A「あのなあ、目の前で刃傷沙汰を見せられて、フツー、トラウマものだぞ」
B「お前はそんなに弱くはない」
A「ありがとうよ。それじゃあ、その言葉遣いも少しは改められないのか?」
B「無理だ」
A「少しは努力する素振りを見せたらどうだ」
B「俺はちゃんと努力してる。……はずだ」
A「それを評価するのは僕だ。その下郎の血で汚れた敷物は南国から取り寄せた逸品でお前の給金半年分はする」
B「ちゃんと洗濯する」
A「はあ……。そうしてくれ、もう下がっていいぞ。この分じゃ、次はベッドの中まで侵入されそうだな。死にたくないなあ」
B「そもそもこの程度の刺客、俺がいなくても問題ないだろう」
A「僕を守るのがお前の仕事だろう?」
B「そうだな」
A「……そんなことを言ってる間に、またお客様だな」
B「わかってる」
A「今度はちゃんと玄関でおかえりいただけよ?」
B「わかっている」
A「まあ、お前が相手にできないほどの手練れなら、僕が主人として丁重におもてなししてやるさ」
B「殺気を抑えろ。漏れているぞ」
A「(息を呑む)僕としたことがはしたなかったな。まさか、お前に品をたしなめられるなんて」
B「問題ない。主を躾けるのも従者のつとめだ」
A「だから、お前はその言葉遣いをどうにかしろ」
B「出迎えてくる」
A「あ、おい。まったく。無理はしないでいいからな」
B「頼りになる主人で、本当に嫌になるな」
お上品キャラから滲む「狂気」や「好戦的興奮」、寡黙キャラから滲む感情といった「限られたキャラクターの枠の中でどこまで表現できるか」を問う台本。ふたりの関係性をうまく構築しないとなあなあな演技に終始してしまう。うまくバックボーンを詰めてキャラクターの枠を上手に捉えたいところ。
・刺客を送り込んでいるのはB
・Aは↑その事実を知っている
・本当はAとBは主従逆。影武者である。実際の主人はB側。
・AはBが路頭に迷わないようにしたい(周囲へBの有用性の誇示)
・BはAに命を助けられて以来、Aのために鍛錬を積んだ