A「あー、これは駄目ですわ」
B「そんな、なんとかなりませんか?」
A「うーん、なんとかしてやりてえのはやまやまなんですけどねえ」
B「困る。金ならいくらでも出す」
A「金ならいくらでも出す?」
B「ああ、だからなんとしてでも直してくれ」
A「おたく、じゃあなんでもっと大事に使ってやらなかったんだ」
B「なんだ、急に。だから、壊れたからここに持ってきたんだろう」
A「だったら言わせてもらいますけどねえ。あんた、どうしてこんなになるまで放っておいたんだ」
B「何がだ」
A「見ろ。見えるか? ここ、中のパーツがグチャグチャだ。こんなになるまでに、こいつはきっと悲鳴を上げてたはずだ。何かなかったか? 壊れる前兆やサインが」
B「そういや、ここ半年くらいカラカラと音がしてたな。まあ、そのまま使えたから気にせず使っていたが」
A「そのとき持ってきてりゃ、こいつはここまでボロボロになることはなかったんだ」
B「だから、金なら出すと言ってるだろう。治すのがお前の仕事だろう」
A「三百万」
B「なに?」
A「治すのに、三百万」
B「ばかな。いくらなんでも法外だろう。まさか、詐欺か」
A「あいにくと、2つ3つほどのパーツがもう廃盤になってましてねえ、入手が困難なんですわ」
B「じゃあ、直せないということか」
A「冗談。こいつを直したい気持ちはおたくにも負けてねえんだよ、俺は」
B「持ち主は僕なんだぞ」
A「じゃあ、おたくのほうが強いってのか? さっき言ったよな。金ならいくらでも払うって」
B「それは」
A「まあ、三百万出すくらいなら、新品こさえたほうがお釣りが来るってハナシですわな。どうします? 直す気がないってんなら、こいつはウチで引き取りますけど」
B「直せ」
A「へ?」
B「直せと言ったんだ。三百万? いいだろう。払ってやる。こいつとはずっと付き合ってきたんだ、今更他のやつに乗り換えられるか」
A「そいつが聞きたかった。そんじゃまあ、直しましょうかねえ。お代金は、んー……、八万ってとこだな」
B「なんだと、やっぱり詐欺だったのか?」
A「まさか。俺は『廃盤品だから金がかかる』と言っただけですぜ?」
B「だったら、なんで急に安くなるんだ」
A「まー、そこは。なけりゃ作るまででしょ。持ち主の愛に応えなきゃ技術屋の魂が廃るってもんでね。さ、邪魔だからちょっと珈琲でも飲んできてくださいや」
B「そうか、直るんだな」
A「愚問。いっちょ腕を振るいますかねえ」
技術屋の気質と、顧客側の心理変化、そしてその互いの駆け引きを前面に出した台本。台本としては、依頼受注→商談成立 の2段階構造となっているので、場面転換を意識したい。また、Aは口調が特徴的なキャラだが、類型としてはよく見るアニキ肌キャラなので、声質によっては主戦場となる人もいるはず。
・AはBを試している。(顧客としてふさわしいか)
・Aは実は詐欺を働こうとしてる。この機械自体に価値がある
・Aは機械性愛
・Aの感情を怒り、悲しみとしてそれぞれ設定する
・Bの持ち込んだ機械は師匠のもの(持ち帰らないと叱られる)
・Bにとっては300万は痛くもない金額。Aを試している。
・Bは300万円を工面することができない
※機械がなんなのか、AとBで共通認識を持つこと