A「お願い聞いて! 私は魔女なんかじゃないわ」
B「黙れ魔女! 穢らわしい口を閉じろ」
A「私は魔女なんかじゃない、本当よ」
B「それは今から我らが決めることだ。針を持て。魔女の乳首を刺して血が出なければお前は魔女だ」
A「魔女の乳首だなんて。それは小さいときにした火傷のあとよ」
B「……おお、血が流れない。魔女だ。魔女だ」
A「何……? そんな尖ってもない針で血なんか出るわけないでしょ」
B「魔女だ、魔女だ。火刑……火にかけるべきだ」
A「やめて」
B「ひぃ! 魔女が口を開いた。呪われるぞ! 早く火を持て」
A「やめて、やめて」
B「今、浄化の炎で魔女を灰にしましょうぞ」
A「お願い。本当よ、本当に魔女じゃないの」
B「ああ、主よ。悪魔の使いを清める我らに祝福を施したまえ」
A「いや、熱い! 熱い! 足が! お願い火を消して消して」
B「おい! 火が弱いぞ! 油を持ってこい! 魔女を消し炭にするのだ」
A「きゃっ! いやぁあああああ! 熱い熱い熱い熱い熱い!」
B「ははは。燃えろ燃えろ魔女め! 穢らわしい魔女め」
A「どうして、私は魔女なんかじゃないのに」
B「この期に及んでまだ言うか。おい! 石を持ってこい! あのうるさい口を黙らせろ」
A「痛い! 痛い! ああいいわ。アンタたちを全員呪ってやる。アンタもアンタもアンタも! 呪ったわ、呪ったわよ! 楽に死ねると思わないことね! (高笑いしながら焼ける)」
B「お、おい石を投げろ! 逃げるな! おい! ぎゃあ! 十字架が倒れて。火が! 火が!」
A「神はいたのね」
B「やめろ。はなせ離せ! ぎゃああああああ!」
A「(高笑い)」
魔女裁判をモチーフにしたもの。裁判を行う側から、命を奪われる側へ、裁判に掛けられる側から命を奪う側へという力関係のスイッチによるギャップを魅せる台本。特に女性側の怨念というか情念をしっかりと魅せたい一本となっている。「神はいたのね」という台詞をどういう感情でいうのか、これに尽きる。
・女は本当に魔女。
・女は初めから審問官を殺すことしか頭にない
・男は女が魔女ではないと知っている(動機は私怨や金など)
・男は魔女を心から恐れている