A「がんばって、マコ」
B「もう駄目。死んじゃう」
A「死なない。ここまで来たんだもん、がんばらなきゃ」
B「でも、このままじゃ二人とも落ちちゃう」
A「だったら早く上ってよ」
B「だって、もう腕に力がないの」
A「それがハゲワシのマコと恐れられたアンタなの? 掴んだ男は離さないんでしょ? ほら、そこの岩の出っ張ってるとこ掴んで! 多分その岩、オスだよ」
B「岩に性別なんてあるの? 駄目、水の流れでつるつる滑っちゃう」
A「きゃあ!」
B「きゃあ! どうしたの」
A「私が掴まってる木がちょっとぐらついたの」
B「このままじゃ、お願いミユ。私を離して」
A「できない」
B「どうして」
A「私たち友達だもん」
B「ミユ」
A「友達は友達を見捨てない。そうでしょ」
B「ええそうね。友達は友達を見捨てない。みすみす死なせてたまるもんですか」
A「マコ。駄目。駄目よ、ちゃんと力を入れて。私の手を掴んで」
B「ミユ。私たちズッ友だからね。死んでも友達だから」
A「駄目よ。お願い」
B「ミユ。お願い」
A「何を?」
B「私のこと、ずっと友達? 聞かせて? それで、手を離して」
A「できない」
B「やるの。きゃあ、ほらまた。その木もう駄目よ」
A「お願いマコ」
B「ミユ」
A「マコ。ずっと友達よ」
B「ありがと。ばいばい」
A「マコー! ごめんね」
命の瀬戸際と友情を演出。長い言葉を吐く余裕などなく、短い言葉に思いをどれだけ詰め込むかがカギ。
B「このまま落ちて死ぬのね。高い……はっ。イケメンの気配を察知。百メートル川下にイケメンが水浴び中? ピピピピ演算開始、シミュレーション完了。滝壺を避けて足からの入射角で入水し、川の流れを利用して……いける! 今いきまーーーーす! いざ三途の川向こう、天国(イケメン)へ!」
(SE:水しぶき)
A「……もう友達やめるわ」