語り手・・・ゴーレムを使役する魔術師的な錬金術師的な少年。ショタの傍らにゴツいゴーレムという視覚的な組み合わせは鉄板だと思います。あるある。
アドリブで台詞の隙間に短い笑いを入れてもよいかと。
「すごいすごい。ゴーレムのこの巨体を一撃で砕くなんて、お兄さんのその武器、興味あるなあ。ん? 危ない? んーん、平気だよ。僕が造ったゴーレムだもん、コレ。主人に拳を向けるなんてあるわけないよ。はあ、しっかし多少壊れやすくしたとはいえ……ん? ああ、まだ死んでないよ? 指を鳴らせばホラ、元通りさ。嬉しいなあ、実験データ、期待してるよ」
キャラの印象をつける目的。全体的に「興奮」しているが、ずっと一辺倒、単調にならないように、リズム的に配置した「?」をうまく利用したい。「平気だよ」が聴取に「兵器だよ」と取られないように注意。逆に「兵器」のバージョンで遊んでみても。彼が興味があるのは、お兄さんではなくその武器であること(=人間に興味がない)は押さえておきたい。ゴーレムが壊れたのが落胆なのか、嬉しい誤算なのか。期待する実験データがゴーレムなのか、武器なのか、ちゃんと設定しておきたい。
「だから無駄なんだって。君の手の内はもう全部把握済みなんだ。212通りは想定済み。僕の知らない213パターン目があるのかい? ないよね。仮にあったとしても意外性は? ネコが空を飛ぶくらいのことでも起きなきゃ……待って。飛ぶの? 飛ぶのかい? はははっ。見せてよ。お願いだよ。簡単には叩き落とされないでね?」
短い文章を並べた構成。興醒め→興味再燃への熱量の変化を楽しむ台本。
「ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。僕の造ったゴーレムは完璧なんだ。計算式も理論も、演算だって頭の中で何百回もした。これは少しだけ脳が焼き切れるかもしれないから使いたくはなかったけど、大地よ、我が命(めい)に従い天(そら)を穿つ巨人と成せ。あはは、できた。さっきまでの50倍の巨体だよ、バイバイ。潰れてしまえ」
感情を発露させる部分と、独白の部分と、術の発動部分、相手に語りかける部分、からの殺意。挙げる部分と落とす部分を上手に作りたい。逆に上げ続けるパターンも、聞かせる技量は必要だが面白い。「潰れてしまえ」を叫ぶにしろ、ぼそっと告げる(落とす)にしろ、手前の「バイバイ」を上手に使う必要がある。ゴーレム完成後に「脳が焼き切れた演技」を乗せたあなた、流石です。
「見ない間に出世したものだね、天才錬金術師君? ああ、いいよ武器は下ろさないで。組織が僕を追放したことに恨みがあるわけじゃないし、君が運良く後釜に座ったことも責めるつもりじゃないんだ。ゴーレムの作れない僕には価値がないからね。かつての天才ゴーレム使いは死んだのさ。ゴーレムがいなくて、色々できないことばっかり。でも、できることも見えてきたよ。今はそうだな、君を倒すことかな」
憑きものが落ちたようなイメージの台本。重要な台詞は、あえて台詞で言葉にした「かつての天才(ゴーレム使い)は死んだのさ」という台詞。自分でしゃべりながらこの台詞は相手のみならず自分にも聞かせる台詞になっているのでとても大事。また、文章情報から「天才と呼称される二人」という関係性と、先任後任という関係性をきちんと読み取る。「武器は下ろさないで」は、通常であれば「いいよ謝らないで」となりそうなものだが、あえて意味を外すことで聴衆に引っかかりを持たせることと、その後に続く綺麗な独白で飽きが来ないように緊張感を持続させる狙いがある。そして主人公サイドになった以上、読者からの好感度が一番大事なので「殺す」なんて言えないのです、「倒す」なのです。