朗読台本。
(タグ)♯朗読
雨が降っています。遠い遠い空から、広い広い大地に降っています。ぽつりぽつりから始まって、しとしとしとしとと空から落ちてきます。川に流れたらさらさらさらさら、桜の花びらを流しています。いっぱい春が集まったところに、黄色い長靴。ちっちゃな長靴。ぱしゃぱしゃぴちゃぴちゃ、跳んで跳ねての大騒ぎ。雨が降っています。雨が降っていました。
随所にあるオノマトペをどう表現するか。視界が上から下、左から右、色彩が雨(無色または青)から桜(ピンク)から長靴(黄色)へと変遷します。聴覚と視覚を意識した朗読が必要。
「雨の音って聞いたことある?」
「あめー? からんころん?」
「もう、食べるほうじゃなくてお天気のほう」
「あー、じゃあ『ざあざあ』だ」
「どしゃ降りなの?」
「どしゃ降りなの」
「濡れちゃうよ」
「濡れちゃうけどいいのだー」
「どうして」
「お風呂が気持ちいいから」
「そっか。雨好き?」
「好きー」
「じゃあ、こっちの飴は?」
「こっちのが好きー」
「やっぱりか」
「おいしいね。からんころん」
「そうだね。からんころん」
明らかに年齢差があるため、ひとりでの演じ分けがしやすいようになっている。「からんころん」という音をどう表現するかが重要。
広い空のはるか上にお日様と雨雲様がいました。
「雨雲どん。雨雲どん。もっと雨を降らせてはくれないか」
雨雲様は答えます。
「お日様お日様。おらがあんまり出ると、文句を言われるだ」
「誰にだい?」
「虫や鳥たちだ」
「でも、私が出過ぎてても水が足りないって言われるよ」
「むむむ、おらが出てもだめ、お日様が出てもだめ」
「むむむ」
二人は頭を悩ませます。
半分ずつ、なんてことができればいいのですけど、この空にはどちらか片方しか出られない決まりなのです。
「どうしんだい、二人とも」
地球の裏から月が言いました。
「お月様。お日様が出過ぎても、おらが出過ぎても文句を言われるから困ってるだ」
「そりゃ、お前さんはいつもたくさん降らせるからな」
「たくさん? それはどんな風だい?」
「そりゃ、ざあざあ降らせりゃみんなもうんざり」
「じゃあ、どのくらい降らせりゃいいのさ? さあさあかい?」
「それは風吹く雲の仕事だ。しとしとだ」
「しとしとしちゃうとじとじとしないかい?」
お日様あいだに入ります。
「ぽつぽつなんてのはどうだろう?」
「そうだそれがちょうどいい」
「それなら私がそのあとほかほかさせてぴったりとんとん」
「そうだそれならちょうどいい。ちょっくらここらでやってみよう」
雨雲様は張り切って空に出ます。
「よおし、それじゃあ降らせるぞ」
そのまま力を入れました。
すると、ごうごうと雨が降り始めます。
「やりすぎちまったー」
結局、雨雲様はまた怒られてしまうのでした。
リズミカルに読める構成にしている。「どんな風だい?」というのが、今から始まるよー、というかけ声の役割となっている。地の文は感情を載せやすい構成にしている。