「墓守」(警告)

語り手・・・墓守

聞き手・・・墓暴き

(場面設定)

墓守は墓を暴きにきた狼藉者に対して警告している


静寂の

「ここは死者たちの安息の地。慌ただしい生を終え、今は安らかに土の下に眠っているのです。ですから、騒がしく走り回っては駄目です。まさかその肩に担いだシャベルで墓暴き、なんてことはないでしょうが、ご安心ください。あなたの墓穴なら私が用意いたします。次は花の一輪でもお持ちになっください。死者は逃げませんから」

狙い

口元に指を運んで「しーっ」ってするような色気が欲しくなる台本。内容としては、墓荒らしに対する「警告」であるため、丁寧な口調の裏にどこまでその色を滲ませるかが肝要。暗に「殺すぞ」と脅しているわけだが、直接表現しない「上品さ」を全体に散りばめた。「シャベル」と「花」という単語による視覚効果の想起も狙いたいところ。


興奮の

「みんな、みーんなここの下に眠ってるんだよぉ。すっかり冷たくなっちゃってさぁ、熱い血潮が流れてたときのことなんてもう覚えてもいないさ。かわいいよねえ。どんな荒くれ者も、弁の立つ学者先生もボク(アタシ)に守られるしかない。大丈夫、誰にもアンタらの墓を暴かせやしないさ。それに、今からお友達もひとり、増えることだしさぁ」

狙い

「何に興奮しているのか」という点を定めたうえで演じたい台本。死者に対して? 死者を作る(殺す)ことに対して? 庇護下に置く対象が増えることに対して? 墓を暴かせない(守った)ことに対して? 

「誰にもアンタらの~」という台詞のみ、土の下に語りかけることになるため、切り替えをちゃんとできるか。


無骨の

「オレはここで墓守をやってる。墓を暴いたりする獣や人から墓を守ってるんだ。たまに墓石を彫ったりもする。あんまり字は得意じゃないが、まあ簡単なのなら読める。アンタの名前はなんて言うんだ? 死ぬ前に教えくれないと、墓が『名無し』になっちまう。オレと同じで『ない』なら、オレが適当につけてやるよ。大丈夫だ、三日前も墓を作ったばかりだからな」

狙い

全体的に台詞が短め。「名前がないこと」に対して自分がどういう感情を抱いているのかを考えて演技したい。名前もなければ識字能力もないという設定が透けているので演技に活かしたいところ。「今から殺す場合」と「もうトドメを刺す直前」なのかで演技が変わる。


妖艶の

「こんばんは、月の綺麗な夜ですね。こんな話を知ってますか? 満月の夜は土の下から眠り人たちが這い出てきて、一夜限りの逢瀬を楽しむという話。いえ、私はちゃんと起きてますよ。起きていれば愛しい人が会いに来てくれたときに気づけるでしょう? じきに月が沈みますね。夜が終わるのはどうしてこんなに早いんでしょうね」

狙い

「一夜限りの死人」がこの墓守なのか、墓守が話している相手なのかで色の変わる台本。二人の関係がどうなのか、しっかり設定したいところ。勿論、墓暴きに対する脅しとしての作り話でもよい。途中で視点が大きく動く(夜空)点をしっかり活用したい。


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