「こんな夜更けにどこに行こうってんだ? まだ出発の時間じゃないぜ。行くつもりなんだな。考え直せよ。まだ方法はあるって! なあ、おい! お前が、お前だけが犠牲になるなんて間違ってる。きっと他に方法があるはずだ。今ダメでも、明日なら見つかるかも、みんなでなら思いつくかもしれない。戻ろう。ひとりで死ぬなんて、寂しいこと、やっぱりダメだ」
途中の「なあ、おい」の呼びかけのところで、相手が歩き出し手いることに注目。相手の出した答えを「間違っている」と言い、本来用意されていない「明日」や、ひとりで死ぬしかない相手に「みんな」を提示する残酷さと青さが主人公あるあるではあるが、そこをいかにパッションで乗り切るかという台詞。自分本位のことしか考えられないところに、主人公らしさを出している台本。
「王都から追われている? 精鋭の騎士団千人が相手? 関係ないね。千人だろうが、一万人だろうが、俺がなんとかしてやる! お前が出頭する必要はねえよ。ちょっくら俺がハナシ、つけてくるからさ。いつものオムレツ作って待っててくれよ。久しぶりに食べたいな、お前のオムレツ。夕飯までには戻るからさ。それじゃあ、行ってくるか」
「オムレツ」という日常を象徴するキーワードにより、相手に対して今が非常時ではないよう安心させようとしている台本。対して王都側への感情の向け方と差をつけやすいようにした。
「いやだ! 絶対に離さない。ようやく、ようやく追いついたんだ。置いていくって言われたって、俺はついていくぜ。俺だって強くなった。強くなったんだよ。お前の隣にだって並べる。そのために毎日修行してたんだ。もう、お前をひとりにさせない。だから、ずっと一緒にいるよ。一緒に居よう、最後まで」
若干、自分に言い聞かせてるのでは? と自己暗示感の残る台詞回し。自分語り→優しい言葉を投げかける という変化をつけやすいようにした。最後まで熱血たっぷりでもいい。現実から目を背けて死体に向かって話しかけるシチュエーションも有り。その場合は、残酷なシーンの「前振り」としてしっかりギャップを出したいところ。
「言ったよなぁ! どんなときでも自分を大切にしろって。それがなんだぁ? いい度胸じゃねーの、オイ。はあー! 俺は悲しい、俺は悲しいよ。世界を救う? ご立派、ご立派。だけど、肝心のお前自身は誰が救ってくれるんだ? 命を粗末にするんじゃねえよ。どうしても行くってんなら、それなら俺が殺す。どうせ散らす命だ、俺が派手に見送ってやんよ」