語り手・・・職人
「こんにちは、オイルください! えへへ、大丈夫ですよ、毎日機材を運んでますから、油缶のひとつやふたつ、全然持てます。ま、その代わり『油くさい女だ』って、男の人には全然モテませんけど。でも、恋人より機械いじりのほうが数倍楽しいですから。あっ、おじさん。そのワゴン、キャスターが緩んでるかも。ちょちょちょいと、直しちゃいますね」
元気系や明るい感じのキャラの台本。「人当たりのよさ」や好感度の高いキャラを演じる。台本自体は「自信」→「落胆」、「愛想のよさ」→「ひとりごと(または小さな声等)」といった差を演出できる前半せんと、落ち込みからの「機械愛」を表現しやすくしている。最後は目が「◇A◇」みたいに光ったり、よだれを垂らせば、極端なキャラにもできる。キャスターの緩みに気がつく観察力のよさのギャップも(どの時点から気づいていたか)。
「どうも~、散らかってますけどぉ、ゆっくりしていって、あ、それまだ乾いてませんよぉ。あらら、ついちゃいましたか? 絵の具。気にしないでください~、絵はまた描けばいいですから。満月の絵が三日月になっちゃったくらいで……アリですね。筆! そこにある奴です。どれでもいいですから。早く! 商談の件ですが、20分、ううん5分ください。仕上げます」
語尾が間延びするような、のほほんキャラ。対して後半は商談相手に雑用を頼むようなギャップ。どちらを「地」とするかで、キャラが変わる。(のほほんがカモフラージュか、絵描き時がトランスか)。「絵はまた~。満月の絵が~」から、少しずつ思考がまとまる様子をうまく演出したい。最後の「仕上げます」は自分に向かって言うのか、相手に向かって言うのかが大事。ちなみに絵の具がついた相手に謝罪していないので「商談相手<絵」である。相手に「早く」と言った手前、自分も「早く」終わらせるあたりにプロ根性を入れている。
「私が服を仕立てるのは、私の服を飾るに相応しい人間だけよ。服に魅力を引き出してもらうなんて甘えん坊さんは、実家のテーブルクロスにでも包まってなさいな。生地だけは上等でしょ。貴方みたいな泣き虫、トルソーの代わりにもなりや……結婚式をぶち壊すドレスですって? そう、役者を食おうってわけね。いいわ、私もその式に出ましょう。勿論、会場で仕立てるのよ。テーブルクロスは余っているでしょう?」
「大人っぽさ」や「拒絶」の台本。「テーブルクロス~」の台詞が対比「拒絶」と「支援」になりつつ、隠喩になっているので、うまく使いたいところ。なぜ引き受けたのか「依頼主におもしろみを感じた」「花嫁を倒すウエディングドレスに魅力を感じた」「式場で仕立てるという試みが面白そう」等、動機は詰めたい。映像作品であれば最後の台詞からシーン転換になるため、余韻のある感じも出したい。
「へへへ、役人はおカタいんだよなぁ。新薬は認可がいるだの治験がいるだの、アタシが薬を作った、ここにすんばらしい薬がある、ハイ飲め。それ以上のハナシがあるか? ないよなぁ? ん? その薬はどうしたのかだって? オイオイ、薬は飲むためにあるんだぜぇ? 役人が患者に薬を飲ませねえってんなら、役人サマに飲んでもらったってだけだよ。ところで、お茶はうまいか?」
陰湿やねちっこさのあるキャラ。「アタシが作った、薬がある、ハイ飲め」のリズムを独特にしている(イメージ:来た、見た、勝った)。「すんばらしい薬」はお茶の中に入っていたが、このキャラが「お茶に混ぜた」理由をしっかり詰めたいところ。報復、薬の役割をまっとうさせたい、治験の代わり等が考えられる。(※よい子は真似しないでください)