「まあ! お父様が南蛮土産の『かすていら』を買ってきてくだすったわ! いい香り。つやつやしていて食べるのが勿体ないくらいですわ。ああ、どうやって食べましょう。そうだ、まずはお茶の準備をしませんと。せっかくだし、玉露を淹れましょうか。お母様、茶の湯の準備をしてくださいませ。え、お母様の分も、よろしいんですの? やったぁ!」
カステラを買ってもらった(喜び)→綺麗だなあ。どうやって食べよう。茶を淹れよう!(期待)→母の分も食べて良し(追加報酬)という喜びのレベルがどんどん上がっていく状況。お母様が遠くにいて、お母様の元に駆け寄るのもよい。「お父様」「お母様(呼びかけ)」「お母様」の使い分けも大事。
「ごめんあそばせ。わたくし、町におりるのはひと月と半分ぶりですから、まさか今はそういう作法になっているなんて知りませんでしたのよ。悪気はございませんの。誠意? ですから、今こうしてお見せしているでしょう? そうですか。それならば結構。あなた方のような粗野な方に、これ以上下げる頭も割く時間もございませんの。ごきげんよう」
品位と矜持。粗野な方と同じステージに下りないように、あくまで上品に怒りましょう。
「そんな! あんまりですわ、若旦那様。嵐山の紅葉がそろそろ見頃ですね、と。この前の文(ふみ)で貴方さまがそう書かれたから、わたくしも『紅葉の柄の着物を新調しました』と。その返事が『ちょうど贈る着物の柄に迷っていたので参考にします』だなんて。他に好い人がいらっしゃるのなら、……早く紅葉が散ってしまえばいいのに」
「……」で何をするかで、演技力を問う台本。「他に好い人がいらっしゃるなら(言ってくだされば、最初から貴方さまと手紙の交換などいたしませんでした)」という言葉を呑み込んでいる。散ってしまえばいい『紅葉』が自分の恋心を指すのか、時間よ過ぎてと願うのか、若旦那の今の恋を指すのか、外の景色を見るのか、袖を通せなくなった新品の着物を指すのか。また、対面で若旦那に言うのか、自室で手紙を握り締めてひとりごちるのか。
「卓球というのは、はじめてやりましたけれど、これはなかなかどうして、存外、……ああっ。今の絶対取れたと思いましたのに。もう一回ですわ。え? ええ、全然疲れていませんのよ。それに、初心者にしてはなかなか筋がいいとは思いませんこと? これは今日中にあなた様から『一本』をとってしまいますかも。……ふふ、冗談です。では、引き続きご教授願いますわ、先生」
冒頭は卓球を動いているので「息の乱れ」の演技が必要。激しい動きや、冗談を言ったり、最後に「先生」と呼びかけているところから、楽しい感情を乗せやすくしている。疲れていませんのよ、と言いながら両腕を回したり振ったりしても楽しいかも。