「先輩、お疲れさまです。あれ? どうしたんですか? テンション低いですね。また徹夜でゲームしてたんでしょ。そんな先輩にいいものあげます。これ、今コンビニで期間限定のチョコレートなんですけど、中にオレンジピールが入ってるらしいです。疲れたときには甘い物とビタミンCですよ、先輩。さあ、今日も一日頑張りましょう」
先輩の体調に気づく点や、普段の生活パターンを把握している点より、原稿上ではある程度近しい関係であることを示唆。コンビニで期間限定商品をチェックする点や、栄養雑学を披露する点により、後輩のキャラクター性を出している。元より流行り物が好きなのか、先輩に渡す口実としてチョコレートをチェックしたのかでも、やりようが変わる。また、先輩の性別がどちらであるかというのも大きなポイント。
「お疲れ様です。先生から話は聞かれてますか? ああ、ちょうど入れ違いになったんですね。今日は僕らで書庫整理だそうです。CからDの棚のファイルを日付順に並べ替えたら帰っていいって言われました。僕は奥からやるので、先輩はCの棚からお願いします。先輩、ちゃんと聞いてるんですか? あんまり進みが遅かったら半分のところで帰りますからね? 僕」
学生、あるいは助手。「奥から着手」する理由が、先輩を気遣ってなのか(自分が奥まで歩く手間をとる)、奥を任せたらさぼりそうだからという理由なのかでやりようが変わる。最後の「帰る」理由も、本音なのか激励(建前)なのかで変わる。関係性の調整ができる台本。
「また先輩とチームですか。よく一緒になりますよね、俺たち。またしばらく一緒になりますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。今日は顔合わせだけですかね? 先輩はこのあと用事とかないんですか? え、ない? そうなんですか。じゃあ今すぐ解散する必要もありませんね。では、今後の方針でも話し合いますか」
「あの、ちょっと仕事のことで訊ねたいことが、あります。今、お時間よろしいですか? 仕様書の二枚目なんですが……え? 敬語は使わなくていい? いや、そうわけには……年上とは言え、自分のほうがここでは後輩ですから。それで、ここの箇所なんですが、あの……先輩? ちゃんと聞いてます? で、ここがですね……先輩。いい加減悪ふざけはなしですよ」
年下の先輩に戸惑う後輩の台本。最後のほうで敬語の体は崩してないが、年上らしく諫める台本になっている。「落ち着いている」「堅物」といったキャラクターを演じる台本。