「ねえ、これ見て! よく撮れてるでしょう? こないだ行った江ノ島の写真。ちょうど晴れてて、結構いい色の夕日だったから、これは運命だって思ってすぐ撮っちゃった。夕日の色と混ざって、ちょっと海が黄色くなってるのがたまらないよね。気に入ったならその写真あげる。また次の撮ったら持ってくるから」
好きなものを語る熱量を演技する台本。「思い出している」演技で、聴衆のイメージを想起させつつ、語りかけて同意を得るような台詞にすることで親近感のあるキャラに仕立てている。
「記念撮影? そういうのいいから。私写真嫌いなんだよね。理由? あー……、写真写りが悪いから。……わかったら、とっととそのカメラ下げて。ちょっと。今、撮ったでしょ。嘘。カシャって音がしたもの、カシャッって。フラッシュを焚かなくてもわかるんだからね。あ、また撮った。いい加減にしなさいよ。写真に写ったら……寿命が縮むでしょ?!」
迷信を信じるタイプのキャラ。「建前(嘘)」と「本音」が同居した台本。どう、その差を見せるかがカギ。
「あ、いいっすね、いいっすね。はい、じゃあ、ちょっとアゴ上げてみましょうか、ああ、いいっすね。いいっす。ちょーかわいいっす。目線気持ちこっちのほうに――ああ、そうですそうです。いいっすよ、レンズも喜んでるっす。最高の瞬間をバリバリ切り取ってるす。じゃあ、笑顔ください――最高っす。今、超輝いてるっすよ!」
「被写体の魅力を引き出す人」というわかりやすいキャラクター配置となっている。割と高めのテンションなんかを演出する台本。
「懐かしい。今、押し入れの整理をしてたら、これ。入学式の写真だって。何年前だろ。うわあ、ちっちゃい。まだランドセルのほうが大きいね。そうそう、このあと桜の花びらがお母さんの鼻に落ちてきちゃって、すごいくしゃみしてたの。周りのお母さんとか子供たちがそれ見て爆笑してたから、恥ずかしかったなあ。今度久しぶりに花見に行きたいね。行こっか」
やさしい空気感や穏やかな感情を出す台本。最後の「行こっか」という台詞がハイライトになるように構成してある。ちなみに、この台本「娘」としても「母親」としても演技可能なように作ってあるため、演じ分けを楽しむことができる。