「進路相談」(探り合い)

A・・・・(進路に悩む生徒)

B・・・・(相談に乗る教師)


生徒×進路指導の先生

A「先生、いらっしゃいますか?」
B「はいはい、いるわよ〜。あら、どうしたの」
A「ちょっと進路のことで相談したいことがあって」
B「珍しい。あなたのことだから、もうとっくに決めてるって思ってた」
A「悩んでるんです。親は国立に行って欲しいって思ってて。ウチにそんな余裕があんまりないこともわかってるんです」
B「それで?」
A「でも、私本当は美大に通いたくて」
B「美大って、あなた選択科目美術だったかしら」
A「書道です。親が、書道は将来も役に立つからって」
B「本当は美術系がよかったわけね。ね、色々あるわよね。油絵とか水彩とか、彫刻とか。あなたは何がやりたいの?」
A「笑わないでくださいね」
B「笑わないわよ」
A「グラフィティアートです」
B「グラフィティアートって、ビルの壁とかトンネルに描くやつだっけ?」
A「そうです。スプレー缶を使って自分の世界を公衆の面前に突きつけるのって、とってもかっこいいなって」
B「へえ、意外。あなたはなんというかこう……大人しいというか、優等生というか」
A「そう演じてるだけです。両親がそう言いますから」
B「本当のあなたは誰にも見せてないってわけね」
A「見せるのって怖いじゃないですか。でも『アート』ならそれができる」
B「美大に入るのって簡単じゃないわよ? 実技試験もあるし。あなた、できるの?」
A「やりたいです」
B「やりたい、か。厳しい世界だってことはわかってるんでしょう?」
A「わかってます」
B「今までみたいないい子のままのほうが世の中生きやすくできてるってこともわかるわよね?」
A「わかってます」
B「別に仕事にしなくても趣味として続けることもできるでしょう?」
A「違う!」
B「落ち着いて。別にあなたを否定したいわけじゃないのよ」
A「私、世間に認められたいんです。正当な報酬をもらって、評価されて、遊び半分じゃ誰も認めてくれないから」
B「認められるために絵を描くの?」
A「違います。私は私の心を表現したいんです」
B「そう。本気ってわけね」
A「はい」
B「じゃ、手始めに遊び半分から始めてみましょうか」
A「先生」
B「ふざけてるわけじゃないわ。本気の手前に遊び半分があるのよ」
A「先生も他の大人たちと同じですか」
B「じゃあ、その気持ちを表現してみる?」
A「もういいです。失礼しました」
B「講堂の裏にあるブロック塀、来月取り壊す予定なのよね」
A「先生」
B「あら、まだいたの。嫌だわ、独り言が聞こえちゃったかしら」
A「いいえ。何も聞こえてないです。失礼します」
B「はい、気をつけて」 

狙い

教師は生徒に対して、バンバンと問いかけを投げつける。それはキャラクター自身というよりは、作品自体のテーマに沿った内容になるため「暗示」がキーワードとなる。生徒にとっては「現実」を突きつけてくる大人という、自分が戦うべき相手(障害)であり、教師は生徒を傷つけないように導きたい、という駆け引きの台本でもある。生徒側は同じ言い回しの台詞を多数配置しているので、演技上での使い分けが腕の見せ所。また、最後の「独り言」のくだりで子供と大人の対比を見せている。

やり方など

・Aは「あなたならできる」という言葉が欲しい

・Aは、Bが周りの大人と同様に否定すると思っており、「ああやっぱり大人たちはダメだ」という認識の再確認をとりたかった

・AはBに恋しており、なんとか自分に興味を持ってもらおうと考えている

・Bは子供が嫌い。

・AはBにとって扱いづらい立場の生徒である(例:理事長の孫)

・Aの父親にBは恋をしている


← ふたり用台本に戻る

← 台本置き場に戻る