A「ねーねー、今日さー、すっげえ面白いことがあったんだけど、聞きたい?」
B「結構」
A「えー、そんなこと言わないで聞いてくれよお」
B「嫌よ。どうせろくでもないことなんでしょ」
A「そんな決めつけは良くないと思うなあ! なあ! 聞いて聞いて聞いて――」
B「セミの抜け殻を拾ったとかいう話なら、しばくわよ」
A「……。ねえ、喉渇かない?」
B「渇かないわ」
A「あ、肩凝ってない? 揉んであげよっか」
B「結構。それより、早く。その抱腹絶倒必至の面白爆笑エピソードを聞かせなさいな」
A「あのー……、そのですね。セミ――」
B「セミ?」
A「セミダブルのベッドが襲いかかってきたから、今朝、組手をした話なんだけど」
B「何よそれ! 詳しく聞かせなさいよ!」
A「え、えーと……朝起きたらさ、なんか背中が硬いなあって思って。見たら、床で寝てんの、俺」
B「それでそれで?」
A「あー……まだ暗いじゃーんって思ってたら、窓際にセミダブルの奴が仁王立ちしててさ」
B「どうなったの?! あなた、怪我とか……してないわね」
A「うん、なんとか倒せたんだ。無傷で」
B「すごいじゃない! だって相手はあのセミダブルでしょう? シングルの――あなたの倍は大きな相手よ。やるわね」
A「あ、ああ。キングサイズだったらやばかったかな……」
B「ダブルやクイーンなら余裕だというの……? ふふっ、見直したわ。結構見どころあるじゃないの」
A「ま、まあね! いつまでも子供のままじゃいられないしね」
B「それじゃあ今夜はウチに泊まりに来る?」
A「えっ?」
B「えっ? じゃないわよ、ないんでしょ? ベッド。倒しちゃったから」
A「いやあ、まあ、それは問題ないというか」
B「まさか、トドメを刺してないというの?」
A「その……流石にセミダブルが気の毒になってさ」
B「ふーん、あっそ……」
A「うわ、ちょっ! 急に抱きついてきたら危ないって――」
B「気づきなさいよ、察しの悪い男ね」
A「え、あ、わかったよ。なあ、今日は泊まりにいってもいいか――」
B「ん?」
A「どうしたの?」
B「カサっ……? ちょっと、あなたポケット何入れてるの」
A「あ。ちょっと! ……えーと、セミの抜け殻ですね」
B「……」
A「ええと、泊まりにいってもいいんですかね?」
B「ええ、構わないわよ」
A「よかった。怒ってないのか。久しぶりだな、君の部屋に入るの」
B「何を言っているの?」
A「え?」
B「お前の寝床は庭よ。セミとでも添い寝してなさい」
A「もう死んでるよお! 待ってぇえ!」
力関係やテンションのバランスが「逆転」するのが今回の台本。とにかく「落差」を作りやすいようにしているので、うまく演技でそのギャップを見せていきたいところ。
・AはBを笑わせたい
・AはBのためにあえて道化を演じている(たとえば身分差の恋)
・AはBからの情報を得たい諜報員
・Bは虫が死ぬほど嫌い
・BはAのために無理をしてクールぶっている(元々は無邪気)