「引換権」(条件提示)

語り手・・・何かと引換に、何かを与えようとする立場の人間

聞き手・・・代価とともに交渉のテーブルに着いた人間


顔に免じて

「何度目ですか。いい加減反省の色くらい見せて欲しいものですね。私だってこれ以上のお目こぼしはできないのですよ。おや、なんですその顔は。そんな顔をしてもだめですよ。だめなモノはだめです。だめです、だめ、と言いたいところですが、ええあと一度。あと一度だけ見逃しましょう。今後はそのだらしない顔を、(咳払い)余所様に見せないように

狙い

「だめ」という言葉を繰り返し出しているが、だめ連呼の間に相手の相貌を見つめていると気が変わるという確かな変化を演技に乗せる必要がある台本。最後に取り繕う咳払いがあったり、その前に自分に言い聞かせるような「ええあと一度」があるため、目の前の顔に甘い自分と規律正しくあるべき自分のせめぎ合いをうまく落とし込みたい。……という恋の一幕のような演技のあとにはぜひ「相手が死にそうな顔をしているため、それを引き留めた」という180度毛色の違う演技も楽しんで欲しい。


金に免じて

「私もこれ以上は付き合いきれないというかあ、正直割に合わないですしい。じゃ、ドラマの再放送が始まるんで帰りまーす。と思ったけど再放送は前観たからいっかあ。んで? これいくらあるの? なんだよ、最初から見せろよお。オレの見立てじゃ500はあると思うけど、オマエの口から聞かせろよ、800ぅ? いいねいいね、これからもヨロシク。わかってんじゃーん」

狙い

金銭提示前は一人称が「私」、気怠げ→金銭提示後は「オレ」、興奮という変化を楽しむ台本。帰りまーす、で相手に背を向けたところを、声を掛けられたり、アタッシェケースの開く音で振り返ったのかなど、動きや間をしっかり考えたい。あとは距離感。金に近いのか「オマエ」に近いのか。金に夢中で、オマエのほうは向いていないのか、などなど。


命に免じて

「明日の朝日は拝めずともよい、そう申したぬしの心意気を妾は大層気に入ったぞ。よい、力を貸してやろう。して、何を望む? 望んだ時点で、夜明けとともにぬしの命はいただくがの。ん? 太陽を討ち滅ぼす? あっはははは、童(わっぱ)、よもや妾に知恵比べかえ。ああ、そう構えるな。ぬしの覚悟を妾が早とちりしたまでよ。命をかけておるのに違いはなかろうしな?」

狙い

このキャラと相手のやりとりで「命を差し出す」と誤認させた原因が妾側にあるのか童側にあるのかを詰めたうえで臨みたい。すべては「あっははは、童〜」の台詞をうまく立てられるかどうかに懸かっている。突如始まる童呼びも忘れず活かしたい。最終的に童相手にこのキャラがどこまでの好感度を得たのかで最終の台詞も変わる。気に入るのか、気に入らないのか、はたまた「こちらも騙し返してやる」のか。


時間に免じて

「あなたの友達が学び、友を知り、恋をし、春を謳歌する。その三年を、私に預けてくれますか? 私の下(もと)で三年あなたは友を捨て、恋を捨て、芽の出ない冬を過ごすことでしょう。ですが、三年。三年後には積み上がった石の上から、あなたの周りの人間だれもが見たことのない景色を見せることをお約束します。私にあなたの三年間をくれませんか」

狙い

青春の一ページみたいな台本。大いにやりやすいとは思いますが、相手が自分を信頼してくれるのかという駆け引きで、相手からのイエスを引き出すための重要な場面であり、言わば恋愛の告白のような緊張感がある。頻出する「三年」というワードで演りようを高めた。私にあなたの三年を「くれますか」ではなくて「くれませんか」にしたのは何故か。このキャラが言葉を選んだ、このニュアンスを噛みしめて欲しい。


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