語り手・・・考古学者
(場面設定)
社会的地位のある人物(考古学者)が、相手に応じて対応を変えている。
「えー、わたくしの調査によりカルサス遺跡の真下には王都のペンデニウム劇場三つ分に相当する空洞が存在することが判明いたしました。先日教え子たちと潜ってみたところ、中には当時の兵士たちと思われる白骨体が8231体ほどありまして。鎧や兜などの当時のままの装飾品が……はい? 数字の根拠ですか? 数えましたけども。正確なデータでなければフィールドワークの意味がありませんので。それでは説明に戻らせていただいてもよろしいでしょうか。あれ? どこまでお話しましたっけ?」
尺が長い場合は「先日教え子たちと遺跡に潜ってみたところ~」から始めてもよい。いや骨8000人超分も数えたの? と、しれっと常人ではできないようなことを、なんてことないように言う天才肌の部分と、緊張でうまく喋れなかったり、どこまで話したかわからくなるような身近(等身大)の部分のギャップでキャラを魅せることを想定した台本。その場合、冒頭の固有名詞群でどもったり噛むといった手法も有り。
「はー、進まないねえ。助手く~ん、お茶。うーんと濃いめで煎れてね。ボク、今日で三徹目だから。アレ? 四日目だっけ? ま、いっかー。ちょっと、そんなに鼻つままなくてもいいデショ。ニオイはちょっとアレだけど、南部の原住民には重宝されてる茶葉なんだから、え、ボク? そんなに臭うかなぁ? まだ白衣が白いからお風呂は大丈夫だと思うけど。あそうだ、頼んでた資料やり直しといてね。(茶を啜って)うわ、にが」
ゆっる~い感じを前面に押し出した台本。徹夜が続き、寝ていない日やお風呂に入った記憶すら曖昧になっている&研究が捗らない状態であることを前提として演技したい。テキトー人間でマイペースだが、仕事の指示は出すし、人から批難されても改める気もない『自己が確立した状態』であることを意識したい。おいしいと言いつつ煎れさせたお茶にケチをつけるというのがオチ。尺が長い場合は「え、ボク? そんなに臭うかなぁ? まだ白衣が白いからお風呂は大丈夫だと思うけど」をまるっと省略して「あれ? そういえばお風呂入ったのいつだっけ?」に置き換えてよい。
「見てよ見てよこれ! 古代王朝の儀式で使われてた燭台だよコレ! (嗅ぐ)はあ、焦げた匂いがする。メラメラと、燃えてたんだろうなぁ。1200年は経ってるはずなのに、こんなに綺麗な形で現存してるだなんて。持って帰ろう! 今すぐ研究室に。ん? あーっ! せ、せ、石碑ちゃーん! うわぁ。かわいいですねえ、後世に歴史を伝えるメッセンジャー。ああ、読みたいなぁ。文献! 文献とってきて! 今ここで解読始めちゃお!」
1200前の燭台から焦げた匂いなんてするわけねえだろ! → 家に帰ろう! → 石碑を「ちゃん」呼び → 石碑に夢中で前言撤回 という、キャラのテンションにより状況変化が目まぐるしくなる台本。石碑に話しかけるところや燭台をかぎ出すところに変態性を出している。また「嗅ぐ」という行為は変態性に絡めやすくしているが、石碑に頬ずりしたり舐めてみたりお好みで変態レベルを上げてみてもいい。石碑に夢中になって燭台を放り投げ捨てたらギャグ色が強くなる。キャラと助手の距離感もさることながら、キャラの位置の移動や動きも意識したい台本となっている。
「ただいまー、いい子にしてたかなぁ! んー! おヒゲが痛いかぁ? ごめんなぁ、パパ一週間くらいおヒゲを剃る暇がなくてなー。今日も着替えを取りに来ただけなんだ。あー、お前とまた離ればなれになるのは寂しいよぉ。チュー? 一週間分のチューするかい? え? 好きな人ができたから駄目? ……ママ? 呪いのミイラ、あれどこの博物館に寄贈したっけー?」
スキンシップ過多の動きの部分と、言葉による寂しさの表明と、行動力(呪いのお取り寄せ)による父の頼もしさと男しての器の小ささをぎゅっと一本に詰めました! ママは近くにいるのか、遠く(リビングなど)にいるのかは決めておきたい。また、娘はヒゲじょりじょりを嫌がっているのか、そして何歳なのかも決めておきたい。当然娘はあまり父親に会えていないので、娘がどういう風に育っているのか、そして娘の状況を(おそらく妻をとおして)どれだけ把握しているのか、自分が演じるキャラ以外のバックボーンが大事になる一風変わった台本に仕上がった。