「愛してる」(洋画)

語り手・・・愛を囁く男

聞き手・・・愛を囁かれる側

(場面設定)

男は愛を訴えている


卒業式で

「今日で卒業だな。初めて君と出会ったのは、覚えてるか? ちがう、もっと前だ。この大学に入る前だよ。君はメインストリートにある洒落たカフェでアルバイト、僕はそこで4ドルもする珈琲一杯で夕方まで粘ってテスト勉強するしがない浪人生だった。君が僕に声を掛けたのは一度だけだったけど、おかげで今日ここでこの言葉を言える。愛してるよ」

狙い

「あなたよりも、あなたを想っていた期間は長いんですよ」「あなたの隣に立てなかったけど今こうして隣にいます」という前口上(前情報)をつらつらと述べた後→「愛してるよ」。最後の一言(短)の凝縮とのギャップで「愛しているよ」が際立つように構成している。


フィアンセ

「料理、おいしかったね。あー……、この後なんだけど、うん。部屋はとってあるよ。とびきりの夜景が見える部屋さ。ニューヨーク街並みが一望できる。君、一度はこの街を見下ろしたいって言ってただろ。夢だったもんね。だけど、ちょっとだけ小さな景色を見下ろしてもらえないかな。結婚しよう、愛しているよ」

狙い

立ち位置が移動する(対面で食事をしていながら、女性に近づき跪いて指輪を渡す)ため、距離感をうまく表現することが大事な台本。「ニューヨークという街を見下ろしたい女性の夢」から、彼女が今までにしてきた努力等バックボーンを想像することも大事。「部屋、とってるんでしょ?」と切り返してくるあたり、二人の関係性も窺える。求婚後、パワーバランスが逆転するように、男性側が冒頭、弱い側であるという脚本家側のギミックも無視せず踏みたいところ。


最後の・・・

「そこにいるのか……? ああ、いるならいいんだ。手を……うん、ありがとう。もうこれが最後だと思うから聞いて欲しい。親父とお袋には最後までアンタたちの息子は勇敢だったと伝えてくれ。あと酒とタバコはほどほどにって。それから、君だ。どうかひとりでいないで欲しい。俺のことは忘れて、誰かと生きて……。ひとりにしてごめんな。愛してたよ」 

狙い

突き放したいのに、手を握るくらいの我が儘は許されてもいいじゃないかin今際の際。愛の言葉を過去形にするくらいしか、突き放すのに非情になりきれない、不器用な男の心情をどう配分するか。前半(「そこにいるのか?」「手を」「ありがとう」)の縋りと後半の突き放し(先に両親の話をしたり、「忘れて」「愛してたよ」)にそれぞれどれだけ心情を乗せるか。それはそれとて、事切れる寸前なので、苦しそうな演技もしつつ。


一方通行の愛

「愛しています愛しています愛していますとも。どうして、この愛を受け入れてくださらないのか。足りない? 足りないというのですか? あの軽薄そうな男はよくて、私ではまだ不足するというのですね。だけどあの男は他の女とも連れ歩いていましたよ。愛が! 濁っている! ええ、だからちゃんと清めておきました。次こそは私に向けてくださいますか? その愛を」

狙い

感情のバロメーターを高めつつ、要所要所で力を抜いたり畳みかけたりやりやすい台本に仕上げている。あとは、間男を害したというわかりやすいぶっとび要素も入れいているので、とにかく演じやすさを目指した。感情をコロコロ変えやすいので、情緒不安定な演技もしやすいだろう。ただし、激しいだけの一本調子にならないよう十分注意は必要。対面に聞き手の女性を置かなくても良い。そのほうがやべー奴にはなるが。


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