「父のことは尊敬しています。毎日こつこつ働いて、ちょっと口数は少ないんだけど、日曜日はよく遊園地とか水族館とかにつれていってくれました。ぶたれたことはないですね。叱られるときは淡々と駄目だと思ったところを言われて、ただ一言『しっかりしろよ』って言うんです。多分、俺も大人になったら、奥さんをもらって親父みたいな普通だけど、普通にかっこいい父親になるんだろうな」
父親のことを語る少年。特筆する部分はないけれど、それをわざわざ語るところに注目。無感動でもいいし、密かな尊敬でもよい。
「ボクね、パパのことだーい好きなんだ。だってパパだよ? かっこいいし、やさしいし、ボクのパパがパパで本当によかった。ボクは幸せ者だよ。パパに言ったらなんでも買ってくれるんだよ。こないだも学校でパパのことを馬鹿にした奴らがいたから、あいつら嫌いって言ったら、パパ、転校させてくれたんだ。あいつらも多分次の学校でまた馬鹿みたいに騒いで楽しくやってるんじゃないかな。パパ、本当に大好き」
価値観の狂った親子。少し癖を持たせつつ、愛情表現などで遊べる台本。
「は? 親父の話? やめてくれよ、顔を思い出すだけでも吐き気がする。毎日毎日酒と煙草に溺れて、家にはほとんどいなし、大体ギャンブルか他の女のとこ。今なら家に居てくれなくて本当によかったと思ってる。母さんがどれだけ苦労したか。は? 金が尽きて助けて欲しいって言ってる。あんな奴、どこかで野垂れ死んでしまえばいいんだ。はは、いい気味だ」
嫌悪感を出すキャラ。親父を許容できないという「青さ」を演出する面もある。
「お褒めの言葉をいただき恐縮です。はい? 確かに私はエナミシンゴの息子ですけれど。いえ、父は日頃から絵の描き方を教えてくれるということはなく、今回の話も特にはしていません。影響は、受けているかどうかはわかりませんが、あの、遺伝子だとか父の話ではなく、今回の絵画についてのお話を。そうですね。父は目標であり、いつかは超えたい存在だと思っています」
二世タレント、親の七光りといったレッテルを快く思っていないキャラの台詞。自分のことを話したいのに、どこまでも父の話題を欲しがる周囲。それを感情を殺してうまくかわするのか、不服に受け止めるのか、キャラクターの性格が出るところ。